福岡県福岡市早良区 都商事有限会社

弊社は昭和51年に設立しました、九州で唯一のダクト・フード消火装置の総合商社です。また、ワンストップ防災設備に関わり、消防法に則った業務全般を専門とする会社です。

家庭用生ビールサーバーの現況

家庭用生ビールサーバーの現況

ITmediaビジネスオンライン

ITmedia ビジネスオンライン

6/6(水) 8:20配信

キリンの月額制ビールは大人気なのに、

なぜ再開できないのか

 家で“つくりたてのビール”を飲みたい。ビール工場のようなところに住むことができたらなあ――。そんな夢のような生活を送ってみたいと考える愛好家もいるのでは。不可能ではない。

1リットル入りのビールはこんな感じ

「そんなの無理でしょ。なにバカなこと言っているの?」と思われたかもしれないが、キリンビールが展開している「キリンホームタップ」をご存じだろうか。専用サイトで申し込むと、月額6900円(税別)で自宅用のビールサーバーを借りることができ、毎月サーバー向けの「一番搾りプレミアム」(1リットルペットボトル×4本)が工場から自宅に直送されるのだ。

2017年6月にこのサービスを始めたところ、すぐに申込者が殺到する。先着順ということもあって、我先に申し込む人がたくさんいて、専用サイトはつながりにくい状況に。申し込みができない状態が続き、不満の声がたくさん届いた。また当初の想定以上に注文する人が多かったので、製造が追い付かない事態に陥ったのだ。「告知をするとすぐに枠が埋まってしまう。このままでは大変なことになる」(担当者)ということで、17年10月を最後に受け付けを中止している。

現時点で、登録者は2000人ほど。販売再開のメドはたっていないので、この人たちだけ“つくりたてのビール”を楽しむことができるわけだが、ここで2つの疑問がある。「キリンビール」という日本を代表する大企業が、なぜ数千人ほどの申し込みがあったくらいで、受け付けをストップしたのか。また、なぜ販売再開のメドがたっていないのか。その謎を解くために、キリンホームタップを担当している落合直樹さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

●申し込みたいのに、申し込めない状況に

土肥: キリンホームタップが人気のようですね。申し込み者が殺到したので、受け付けを中止しているそうで。月額6900円で、1リットルのペットボトルが月に4本届くわけですが、ちょっと高いですよね。350ml缶に換算すると、1本当たり600円ほどになる。スーパーやコンビニなどの店頭価格と比較すると、2~3倍も高いのに売れに売れている。そもそもどういったきっかけで、このようなサービスを始めたのでしょうか?

落合: キリンホームタップのサービスは2017年6月に始めました。ただ、15年8月から1年半ほどかけてテストマーケティングを行っていました。ほぼ同じサービスで、価格は8000円。200人にビールを直送して、サービスの運営に問題はないのか、お客さんの満足度に問題はないのか、などを確認していました。

特に問題はなかったので、初年度は3000人を目標にサービスをスタートしました。初めてのサービスだったので、どのくらいの応募があるのかよく分かりませんでした。350ml換算で600円ほどするので、社内からは「そんなに高い価格で、本当に売れるのか?」といった指摘がありました。一方で、試飲していただいた人からはこんな意見がありました。「信じられないほどおいしい」「店で飲んでいるような感じ」「いや、店よりもおいしいかも」など。

土肥: ふむ。

落合: 17年4月に500人を受け付けたところ、1週間ほどで満員に。社内からは「まずまずだね」「順調じゃないか」といった声がありました。翌5月にも500人を募集したところ、4~5日で満員に。8月に200人を募集したところ、募集人数と入会希望者の数にものすごく差がありまして。PCやスマホなどを使って申し込もうとしているのに、画面がなかなか動かない。そんな状態になって、30分ほどで締め切りました。

こちらの予想以上の人が応募してきたので、「かなりマズいな」と感じました。このままではいけないということで、サーバの容量を増設するなどして、10月に募集を再開しました。800人を募集したところ、再び画面がなかなか動かない状況に。1万人ほどの応募があったので、コールセンターに苦情の声が相次ぎました。「申し込みたいのに、アクセスができない。どうなっているんだ」と。

●アンコントローラブルになった3つの理由

土肥: 計算すると、10月時点での申し込み者は2000人ほどになりますよね。初年度の目標は3000人だったので、まだまだ余力があったのではないでしょうか?

落合: 少しずつ応募が増えて、登録者は月に300~400人を見込んでいました。応募が少なくなれば必要に応じて広告を出して、コントロールできればと考えていたんです。ですが、10月には4時間で終了してしまって、そのときにはアンコントローラブルな状況になっていました。大変ありがたい話ではあるのですが、こちらの見通しが甘かったと言わざるを得ません。

土肥: 問題はどこにあったのでしょうか?

落合: 3つあったと分析しています。1つめはサーバの容量が不足していたこと。当社は従来型のビール産業なので、自社でECサイトを運営することに慣れていません。たくさんつくって、たくさん売るという知見はあるのですが、お客さんから直接注文を受けて発送する。その窓口になる専用サイトをどのようにすればうまく回すことができるのか。その点で、知見が不足していて、想定以上の事態に十分な対応ができませんでした。

2つめはビールの製造が追い付かない恐れが生じたこと。

土肥: ええっ、ちょっと待ってください。「キリンビール」は日本を代表するビールメーカーですよね。大量のビールをつくるのは慣れているはずなのに、2000人ほどのビール(月1リットルのペットボトル×2)を提供できなくなるかもって想像できません。

落合: 先ほども申し上げましたが、当社は大量に生産して、大量に輸送して、大量にお届けする。大量生産に対応できるインフラはもっているのですが、少しの量をつくってそれを届けることに慣れていなくて。キリンホームタップは月額6900円ですが、12月には1人当たり9000円ほどの注文がありました。また、扱っているのは「一番搾りプレミアム」だけでなく、限定ビールも扱っていまして。当初の予想よりも注文が多かったので、生産現場が追い付かなくなるかもという事態になりました。

3つめはアフターサービスの対応に追われたこと。業務用のビールサーバーであれば、担当者がいますので、何か問題が発生した場合には、すぐに対応することができます。ただ、キリンホームタップの場合、お客さんの家で使用するので、自宅に訪問するのは難しい。「使い方がよく分からない」「ビールサーバーのガスが漏れているのではないか」「キャップがかたくて回せない」など、さまざまな声がありました。「既存客の課題を解決する=新規客の対策になる」ので、アフターサービスに手を抜くわけにはいきません。昨年の秋から着手していまして、ここに時間がかかっています。

●お客さんの不満を解決するしかない

土肥: 1つめのサーバの問題は、ぶっちゃけ時間とお金が解決してくれるのかなあと。対応するのは不可能ではありません。

落合: はい。

土肥: 2つめのビールの製造能力については、これもなんとかなるかなあと。いや、ビール会社なので、なんとかしなければいけない。「2000人分のビールをつくることできませ~ん」となれば、それこそ大問題なわけで(笑)。

落合: はい。いまは工場を整えまして、問題ございません。

土肥: そうなると、最大の問題は3つめのアフターサービスではないでしょうか。初めてのサービスなので、頭になかった問題も起きているはず。また、現場に足を運ぶことが難しいので、電話口でお客さんから「何を言っているのか、よく分からん!」といったお叱りの言葉もあったのではないでしょうか?

落合: 2000人にご利用いただくと、2000通りの問題が出てきたといった状況です。お店で生ビールを注文すると、きれいな泡が出てくることが多いですよね。適切な量で、きめ細かで。キリンホームタップを使えば、お店ででてくる生ビールと同じようなモノがつくれるはずと思われているお客さんが多くて、「きれいな泡ができないじゃないか」といった声もありました。

お店でビールをつくったことがある人であれば想像できるかと思うのですが、ビールの泡はそのときの状況によってどうしてもバラつきが出てしまうんですよね。こうした課題をどのようにすれば克服できるのか。技術系の担当者と「改良できるのか、できないのか」といったやりとりを何度もしました。また、実際に使っているお客さんの自宅を20軒ほど訪問しました。どういう操作をしたのか、どうしてこうなったのか、どんな不満があるのかなどを聞いて回りました。

土肥: ええーっ、そこまでする必要はないのでは?

落合: いえ、そういうわけにはいきません。この事業は継続させることがものすごく大切だと考えています。加入者数は多かったけれども、継続率は低い……ではダメ。継続率を高くするにはどうすればいいのか。お客さんの不満をひとつずつ解決するしかありません。現状、お客さんの不満を解決できていないので、応募を再開できていない状況なのです。

土肥: 再開のメドは?

落合: 今年度は難しくて、できれば来年度に再開できればと考えています。

●「家で新鮮なビールを飲みたい人が多い」ことが分かってきた

土肥: 家庭用のビールサーバーって、以前にもなかったでしょうか? 確か10年ほど前にもあったような。

落合: ありました。「キリン樽生一番搾り」(2980円、1520ml)専用のサーバーをセットして、炭酸ガスの圧力でビールを注出するというサービスを展開していました。2002年12月に全国販売して、専用サーバーは数十万台も売れたんですよ。10年ほどサービスは続いたのですが、12年12月に終売になりました(サーバーは09年12月に終売)。

土肥: 数十万台といえばかなりの数ですよね。なぜ終売になったのでしょうか?

落合: 簡単に設置するだけで自宅で、生ビールを飲むことができる。発売当初はものすごく好調だったのですが、しばらくするとお客さんから「違うビールはないの?」といった声をたくさんいただくようになりました。また「価格が高い」といった意見もありました。

違うビールを提供したものの、別の問題が出てきました。スーパーやコンビニなどで販売していたのですが、店頭に並べてもらえなくなってきたんですよね。売れなくなってくると、販売することが難しくなる。当社として、そこをコントロールすることは難しい。お客さんは買いたいなあと思っていても、店に行っても売っていないケースがありました。また店頭に並んでいても、なかなか売れていなかったこともあってちょっと古いモノが並んでいるケースもありました。

土肥: 「ビールの種類が少ない」「価格が高い」といった声のほかに、サイズの問題もあったのではないでしょうか。1520mlとなるとかなりの大きさになる。スーパーやコンビニ側からすると「場所もとるのに、売れないとなれば、棚に並べることはできない」となっても不思議ではありません。

落合: おっしゃる通りだと思います。ただ、この事業を通じて「自宅でビールサーバーを使って新鮮なビールを飲みたい人がたくさんいる」ことが分かってきました。大々的に展開すると、短期的に売れるかもしれません。ただ、継続的に飲んでいただくためには、当時は環境が整備されていませんでした。

継続的に楽しんでもらうためにはどうすればいいのか。不特定多数の人に販売するのではなく、会員制にしてはどうか。新鮮なビールを飲んでもらうには、定期的に配送すればいいのではないか。ECサイトで販売すれば、前回の課題を解決することができるのではないか。といったことを考えました。

●安定的に稼ぎ、優良客をつかむ

土肥: スーパーやコンビニなどを介さない直販モデルを採用すれば、詰め替え用のビールが店頭から姿を消すという問題を避けることができる。サーバーは持っていても、ビールが買えないという前回の課題を解決したわけですよね。

それだけではありません。月額制にしているので、月々の売り上げが見込めることも大きい。また、高価格の商品を購入する客を手にすることができる。安定的に稼ぐことができて、優良客をつかむことができるビジネスモデルですね。

落合: まだまだ規模が小さいので、売り上げはそれほど大きくはありません。「大成功」というゴールがあるのであれば、スピードを重視することも考えられるかもしれませんが、このビジネスは「信頼」されなければいけません。繰り返しになりますが、お客さんの不満をひとつずつ解消して、継続していただかなければいけません。そのために、ご迷惑をおかけしていますが、いまは応募を受け付けていないのです。

当社はビールを大量につくっている会社なので、この事業で同じことをする必要はありません。お客さんに付加価値であったり、非日常の体験だったり、そんなことを提供することが大切なのかなあと。例えば、ワインが好きなお客さんがいれば、特別なワインを提供する――。そんなことができるプラットフォームに成長することができれば、と考えています。

(終わり)

>ITmediaビジネスオンライン 6/6(水) 8:20配信分より転載させていただきました。

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